真紅の空
「そういえば、ないな」
暁斉も考え込むようにして
自分の手をまじまじと見つめる。
不思議。
あのピリッとした痛みも今じゃ何も感じない。
ということは暁斉も痛みは感じていないの?
「なるほど。あっちで受ける傷も
こっちじゃなくなっているのか。
タイムスリップって、
向こうの時代と繋がっているわけじゃないんだな」
仁の言葉に、少しだけ悲しくなった。
あっちで暁斉たちが頑張っているのに、
こっちの世界には何も伝わらないの?
あの傷は生易しいものじゃない。
ちょっと指を切りましたとかそんなレベルのものじゃない。
命がけの傷なのに。
あれは暁斉たちが命を賭けて戦った証なのに。
「あ、暁斉。あたし……」
急にあっちの時代にいた時のことが恥ずかしくなって、頬に熱が宿る。
ぱっと目を逸らして、暁斉の手を離した。
すると暁斉も鼻の頭をかいてコホンと咳ばらいをした。
「なぁ、ちょっと暁は向こうの部屋に行っててくれないか?」
「何?」
「由紀と話したい」