真紅の空


*


そのままぼうっと過ごして、夜が来た。


微かに、金木犀の香りがしたような気がした。


ああ、きっと、則暁くんだわ。
彼が近くにいる。
そう思うと大泣きしたくなった。
きっと、彼はもう……。


「暁斉様!お知らせがあります!」


家臣の一人が叫んで部屋に飛び込んでいった。
それを見て。ゆっくりと暁斉のいる部屋へ向かう。


その知らせはきっと、彼の知らせ。


「どうした?そんなに慌てて」


「敵方が暁斉様の御首を差し出せとのことでしたが、
 何者かが身代わりに切腹した模様。
 その者が……その……の、則暁殿だと思われます」


「な……に?」


暁斉が眉を顰めた。
瞳が大きく揺れる。


ああ、来たかと思って一度目を強く閉じた。


やっぱり則暁くんは死んでしまったんだ。


もうこの世にいない。
それが悲しくて泣きだしたくなる。


だけど、堪えた。
ここで泣くのは、あたしじゃない。


「則暁が……なんだって?」


「そ、それが……」


「もういいわ。行って」


あたしが家臣にそう言うと、
家臣は慌てて部屋を出て行った。


部屋にあたしと暁斉の二人きりになる。
蝋燭が、ゆらゆらと揺れていた。


「今、あいつ……なんて言った?」


ポツリと、暁斉が呟いた。


「則暁くんが、貴方のために死んだのよ」


「なんだと……?」


放心状態だった暁斉が、あたしを捉えた。
じっと見つめられる。
逃げ出したくなったけれど堪えて足に力を入れる。
あたしが、伝えなくちゃ。


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