真紅の空





そのままぼうっと過ごして、夜が来た。


微かに、金木犀の香りがしたような気がした。


ああ、きっと、則暁くんだわ。
彼が近くにいる。
そう思うと大泣きしたくなった。
きっと、彼はもう……。


「暁斉様!お知らせがあります!」


家臣の一人が叫んで部屋に飛び込んでいった。
それを見て。ゆっくりと暁斉のいる部屋へ向かう。


その知らせはきっと、彼の知らせ。


「どうした?そんなに慌てて」


「敵方が暁斉様の御首を差し出せとのことでしたが、
 何者かが身代わりに切腹した模様。
 その者が……その……の、則暁殿だと思われます」


「な……に?」


暁斉が眉を顰めた。
瞳が大きく揺れる。


ああ、来たかと思って一度目を強く閉じた。


やっぱり則暁くんは死んでしまったんだ。


もうこの世にいない。
それが悲しくて泣きだしたくなる。


だけど、堪えた。
ここで泣くのは、あたしじゃない。


「則暁が……なんだって?」


「そ、それが……」


「もういいわ。行って」


あたしが家臣にそう言うと、
家臣は慌てて部屋を出て行った。


部屋にあたしと暁斉の二人きりになる。
蝋燭が、ゆらゆらと揺れていた。


「今、あいつ……なんて言った?」


ポツリと、暁斉が呟いた。


「則暁くんが、貴方のために死んだのよ」


「なんだと……?」


放心状態だった暁斉が、あたしを捉えた。
じっと見つめられる。
逃げ出したくなったけれど堪えて足に力を入れる。
あたしが、伝えなくちゃ。


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