真紅の空



そう。あたしには仁がいる。


仁より好きかって聞かれるとまだ分からないけれど、
暁斉が好きだということは確かだった。


でもそうなると仁はどうなるの?
あたし、二股?浮気?


自分が二人の人を好きになるなんて思ってもいなかった。
こういう場合、どうしたらいいの?


「アンタの世界に思い人がいるのは知っているさ。
 それでも、この時代にいる間は
 あいつを好いてやっていてほしい。

 それこそ、その思い人を忘れてしまうほどにな」




この時代の間だけ……。




芳さんの言葉を反芻させて胸に手を当てる。
この気持ちはあっていいものなんだと、
芳さんがそう言ってくれている気がする。


「まずは礼を。ありがとう。
 これであいつは、暁斉様は救われるさぁ」


芳さんに抱きしめられる形で乗っているあたしは、
背中からの温かい歓迎の言葉に胸が温かくなった。


芳さんの鎧を見て、暁斉の鎧姿を思い出す。


赤地の鎧は、炎が燃え上がっているように見えた。


生き抜く覚悟を決めて、闘志を燃やす色。
どうかその肌がその鎧のように赤く染まらなければいいと思って、
目を閉じて祈った。


無事に帰ってきますように。
そうしたらあたし、あなたのお説教でもなんでも
黙って聞いてあげるから。


だから帰ってきて。
あなたが首だけにならないように、
今はただ、ここで願うしかなかった。



< 90 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop