真紅の空
一番最初って、あの時?
美しいだなんて初めて言われた。
あたしには雪姫の方が断然美しいと思うけれど、
暁斉にはあたしがそういう風に映っているの?
なんだか胸の奥が少しくすぐったく感じる。
急にあいつの見方が変わった。
特別、か。
そう思ってくれているなら悪い気はしない。
「姫様。とても綺麗でございます。
どうか、我が主の御心をお救いください」
「で、出来るかな」
「貴女様ならきっと」
暁斉を救う。
それがきっとあたしの使命なんだと思い始めて、
もうそれは確信に変わった。
あたしは、そのためにここにいる?
「あたしが、暁斉を助けるから」
「誰が誰を助けるって?」
気付くと芳さんがひれ伏していて、
誰がいるのか振り向かずとも分かった。
分かったらほっとして、でも実感がわかないような気もして、
振り向きたいのに振り向けない。
込み上げてくるものを抑え込んで、胸に手を当てた。
「あき、なり……?」
「それ以外に誰がいる」
その憎々しい言い方、本当に暁斉だ。
本当に、帰って来た。
無事に、帰って来たの?
「芳、鎧を脱ぐのを手伝ってくれ」
「はっ!」
芳さんがあたしの横をふわりと通り過ぎて、
後ろからカチャカチャと金属のぶつかる音が聞こえた。
その音を聞きながら、唇をきゅっと噛みしめた。
なんて言ったらいいのか分からない。
お帰りって言ったほうがいいのかな?
どうなんだろう。
こんなに早く帰ってきて、戦はどうだったのかな?
勝ったのかな。
いや、勝ったから今ここにいるんだろうと思う。
怪我をしているかな。
今、どんな顔をしているんだろう。