真紅の空



見れば暁斉の顔も真っ赤に染まっている。


照れているのだと瞬時に悟った。
こういう経験がないのか、狼狽える姿が可愛いと思ってしまう。


でもね、そこまで狼狽えられると、
こっちまで恥ずかしくなってくるからやめてほしい。




「そのようなことは、ない」



消え入りそうな声で暁斉が言う。
それを聞いただけで、嬉しくなる。
嫌ではないということは、
少なからずあたしという存在が暁斉の中にあるということ。


それだけでいいような気がしたけれど、
やっぱり余すことなくこっちを向いてほしいと思う。


欲張りかな?それでもいい。
この人に、愛されたいと思ってしまった。


「この傷、残らぬといいな」


突然声を上げた暁斉は、そっとあたしの頬に触れた。
戦場で受けた傷がピリッと電流が走ったように疼く。


「だ、いじょうぶよ。あんたの傷と比べたらこんな傷、
 どうってことないわ」


「心臓が、止まるかと思った……」


えっ?と思って首を傾げる。


暁斉は頬に手を添えたまま、項垂れるように頭を下げた。


顔が見えないから、どんな思いで
そう言っているのか分からない。
けれど、どこか震えていた。


「お前を戦場で見つけた時、心臓が破裂して
 止まってしまうかと思った。
 お前が死んだらと思うと俺は、
 いてもたってもいられなくなって……
 無我夢中で、敵を切りつけていた。
 

 お前の頬に傷が出来て血が流れるのを見た時、
 意識が離れていって倒れるんじゃないかと思うくらい……怖かった。
 お前は未来から来た異国の地の者だが、
 この世からいなくなってしまうことがたまらなく……っ、嫌だったのだ」


震える声で、暁斉が言う。
すると急に涙が込み上げてきて、
頬に触れていた暁斉の手を掴んだ。


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