毒舌彼氏と最悪彼女


あ、あの最低最悪な女が目の前に居る。
足がわなわな震えだし、心臓が金槌で叩かれるようなそんな痛みが走った。

ちょうど隣にあった鏡に映った自分を見ると顔が真っ青になっていた。
まるで死人のように青ざめた顔がそこには映っていた。
大きく目を見開き、口は閉ざすことが出来ず開いたまま震える。

思い返すだけで飛び降りて死にたいくらいだった。
あいつは、あいつは私を人生のどん底に落とした張本人だ。
でもなんで、なんで私のこのアカウントを知っているのだろう。
…誰にも教えた事のないアカウントを、どこでどうしたら知ることが出来るのだろう。

頭の中はもうごちゃごちゃだった。

…だが私は放送の時間がもう終わりに近づいていることに気づき、瞬時に噛みながらもこうしゃべった。

「あッ、もうそろそろ終わりの時間だ!ってことで次の枠、行かせてもらいますので、じゅっ、準備しますね~!」

ブチッ

…はぁ~…

こ、これでよかったんだ。

ピロリロリ~ン

「ヒッ…」

携帯の着信音にびっくりした。
…グループからの連絡だ。

”彩翔、あれ例の…”

とだけ連絡が来ていた。
連絡してきた人物は、星羅だった。

そう、星羅には全部、放送では詳しく話さなかった部分も全部話した。
一から全部話した。嫌われるかも知れない恐怖でみんなに話せなかったことも全部全部話した。
…ここまで親身になって聞いてくれたの星羅だけかもしれない。
親にも言えない話を星羅はちゃんと聞いてくれた。

文字を打ってるだけなのに自然と涙があふれてきた。
あの時は本当にこの世からいなくなりたかったぐらいだった。
でも、…もうあの頃の私じゃないから。

立ち向かわなきゃいけないんだ。

『あいつがその…なんてしつこいってゆーかどーやって彩翔アカウント見つけ出したんだろうねぇ…』

『ストーカーにもほどがあるよ、全く。正直な話、もう忘れようって頑張ってたんだ。…けど今回の事で全部思い出しちゃったよ。本当に震えがとまんなくってやばいんだよね』

『…みんな心配してるよ。とりあえず、連絡だけしておきなさい』

グループの方はみんな心配してくれてるみたい。
…早く行きたいところだけど、話す気にはなれない。

『落ち着いてからでいいから。』

星羅の言葉に涙が止まらなくなった。


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