まんまと罠に、ハマりまして
それとも。
課長の気遣い、なんだろうか。

32歳。
24歳の私から見たら、大人だ。
しかも、課長程の人。
私の緊張をほぐすくらい、簡単なことなのかもしれない。


「…課長。トマト、お好きなんですか?」
「ん?」


一人暮らしの割に、大型な冷蔵庫。
真ん中、野菜室を開けると、やたらとトマトが入っていて。
プチトマト、ミディトマト。
後、何ていう種類だろう?
カラフルなトマト。


「トマトが、たくさん…」
「あぁ。好きなの適当に使って。出来れば、トマト多めで作ってくれると嬉しい」
「トマト、多めで」
「あ。渡来が苦手じゃなければ」


そう考えると。
きっと、これもそう。
たくさんのカラフルなトマト。


「いいえ。私も好きです、トマト」
「良かった。じゃあ、頼む」
「はい」


あえて、私に野菜室の中を見せたんだろうなって。
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