まんまと罠に、ハマりまして
やることがいちいちスマートで。
見た目だけじゃなく。
ほんとに、素でカッコいい人なんだろう。


「渡来。料理するんだな。慣れてる」
「一応。自炊はしてます」


手際よく、具材を炒めながら私にも目を向けていて。


「毎日?」
「あ、はい。ほぼ」
「仕事終わって、疲れてるだろ?」
「そうですね」
「俺は怖いしな」
「!」
「ぐったりだろ?」
「えっと、あの…」
「さすがに、はいとは言えないか」


この短時間で。
私の中の怖い課長が、だいぶ薄れてる。
課長が、課長じゃないみたい。
一緒にキッチンに立っているのも、いいのかもしれない。


「渡来は分かりやすいからな」
「え?」
「いつも顔に出てるし。怖ーい。近づきたくなーいって」
「え!」


時々軽く触れる肩が。
距離を縮めてくれてる気がして…。



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