【完】こいつ、俺のだから。
「まじかよあいつ……。鬼神だな」
楢崎はあたしの隣でポツリとつぶやいた。
あたしはそっと、自分の膝に視線を落とす。
コケたところは血が滲んでいて、悲惨なことになっていた。
「楢崎ごめん。あたし、保健室行ってくるね」
「えっ。あ、おう! 俺も行くか?」
「大丈夫。ありがと」
ニッと笑って見せて、あたしはすぐにその場を離れた。
クラスメイトのみんなは、あたしがリレーをめちゃくちゃにしたことに対して怒ったりしなかった。
だって佐野が、1位を取り返してくれたから。
あたしを攻めることより、佐野の活躍に胸がいっぱいなのだろう。
佐野の周りには、もう人がいっぱい溢れてる。