【完】こいつ、俺のだから。
「久しぶりだね。さっきのリレー見てたけど、大丈夫だった?」
やばい。やばい。
どうしよう。
「……大丈夫、です」
妙な汗が、あたしの頬を伝う。これは走ったからとかじゃない。絶対。
「でもその足はひどいって。保健室行くんだろ?俺もついて行くよ」
「ひとりで、行けます」
「何言ってんの。ほら、手当てしてあげるから」
「本当に、平気ですから……」
早く離れたい一心で、歩き出す。横を通り過ぎたとき……。
「あーあ、仁菜変わっちゃったなぁ」
背後からそう言われ、思わず立ち止まってしまった。
膝の血がズキズキと痛んで、足が言うことをきかない。
まるで蛇に睨まれたカエルみたいに、動けなくなった。