【完】こいつ、俺のだから。
薬品の匂いが、鼻腔をくすぐる。
保健室は独特な香りがして、ちょっと苦手だ。
でもなによりもそう思うのは、こんなところで、こんな状況で、こいつとふたりっきりってことが、原因かも。
椅子に座ってるあたしと、正面からしゃがんであたしの膝を見てる佐野。
その手には消毒液がある。
……絶対に落ち込んでるところなんて見せるもんか。
耐えろあたし、いつも通りの仁菜でいるんだ。
そう、意気込んだときだった。
――シュパッ。
「いったぁぁぁあ!!」
膝の出血部位に、強烈な激痛が走る。
なんの予告もなく佐野が消毒液を吹きかけてきたからだ。
シュパッとじゃなくて、他になんかなかったの!?こう、例えばほら、チョロッとかさぁ……!?
「痛いじゃない!もっと優しくしてよ!」
「消毒液に優しいもクソもねぇだろうが」
「いたわれよ!あたしケガ人だろ?」
「……悪かったよ」
「だから謝れって…………え?」
え、今、謝った?
ななな、なんで!?