【完】こいつ、俺のだから。
「ついてこないでくれる?」
「無理」
……無理って、なんでよ。
あたしが振り返って言ってしまったせいで、佐野の真剣な表情に見つめられるハメになった。
あぁもう。そういう表情はホントに参る。
どうしていいかわからなくなるんだ。
「今は、ひとりになりたい気分なの」
「俺はひとりにさせたくない」
「……っ」
意味わかんない。やめろ。
佐野のクセに。
「ケガしてるだろ。手当するぞ」
「いい。こんくらい、自分でできる」
だけど佐野は、あたしの言葉なんて無視して強引に手を掴んで引っ張った。
もう、なんでひとりにしてくんないかな?
人が柄にもなく落ち込んでんのに、ほっといてほしい。
そんな優しく、手を握るなんてズルいだろ……。