【完】こいつ、俺のだから。
頬にツゥーっと何かが伝う。
火照った頬を、冷たい何かがひとつ、流れていく。
なに、これ……?
「ほら見ろ。お前ホントは泣きたかったんだよ。それを全部溜め込んでるてめぇの方がよっぽどバカだわ」
下からあたしを見上げる佐野は、そっとあたしの頬に手を添えた。
口は悪いのに、ムカつく言葉なのに、それとは対照に、すっごく優しい手。
……あぁもう、なんでこいつに。
なんでこんなやつに、泣き顔見られてるんだあたしは。
「……こ、これは汗だ!」
「ちげぇよ」
「あたしが泣くワケないじゃん!そこらの女子みたいに泣きわめくワケない……!」
溢れる涙はポタポタと落ちて、あらゆるところを濡らして行く。
「お前のは強いんじゃねぇ。強がってるっつぅんだよ」
「!」
ハッとした。
まるで、核心を突かれたみたいに。
佐野はそんなあたしの一瞬の動揺を、見逃さなかった。