【完】こいつ、俺のだから。

「認めろよ、早く」



否定することを、許さないと言っているような容赦のない声。



でもあたしは、フルフルと首を横に振った。




声を出すことができない。



きっと今何か言ったら、みっともない声しかでないって、わかってたから。



だけど佐野は、まだあたしから離れる様子を見せない。



ずっとまっすぐ、変わらずにあたしを見つめてくる。




……あんた、その顔で見るの反則だ。




「弱い自分見せたくねぇっていうお前の気持ちもわかるけど、でもそれ間違ってるだろ。
お前ばっか我慢しなきゃいけねぇのかよ？俺ぐらいにはそれ、言えねぇか？」



……大切な人に告げるみたいに、優しいその声に、涙腺は緩みまくる一方。



あたしの勘違いも、いいとこだ。





「……そ、そんな自分勝手なこと、誰がするか」



案の定、声はみっともないくらい震えていた。



なのに目の前にいるこいつは、あたしのことをバカにしてこない。



相変わらず優しい手で、あたしの頬を撫で、涙をすくった。



ボヤけてた視界が、鮮やかになる。