【完】こいつ、俺のだから。
「俺の知らないところで、俺以外のヤツを想って、お前が泣くとかムカつくんだよ」
佐野から香る、汗のまじったいい香り。
強く強く、その胸に顔が押し付けられる。
「お前のこと泣かせていいのは、この俺だけだ。
他のヤツにそんなブス面見せるんじゃねぇ」
なぜか、苦しかった。
それは強く抱き締められて、息苦しいだけなのか。
それとも……
佐野の言葉に、あたしの胸が反応してるからなのかは……わからない。
「お前は俺がもらったんだ。
元カレだかなんだか知らねぇけど、お前の辛いもんも全部……俺がもらうから」
ゆっくりと、抱き締める腕が優しくなる。
「だからお前は、もうひとりで泣かなくていい」
深く息を吐きながら、佐野はあたしの肩に顔をうずめてきた。
「全部、俺にぶつければいいから……」
一呼吸おいて、そっと、その甘い声は耳元で囁く。
「だから……早く笑って……」