【完】こいつ、俺のだから。




「ぷはっ……!」



……ダメだ。心臓鳴り止まねぇ。


無理だろこれ、絶対に。




修行したせいで、前髪から雫が滴る。



涙みたいにポロッと、一粒が落ちた。




それを見て思い出す。



こないだの体育祭で、あいつが泣いた姿を。


俺以外のヤツを想って、泣いたあいつのことを。




絶対に泣き顔を見せようとしないあいつに、俺は……



無理やりにでも、強引にでも、せめて俺だけには涙を見せてほしくて。


あいつの気持ちなんて、二の次で。



強がるあいつの気持ちを無視してまで、心の奥にせき止められていた想いを、全部言わせた。



絶対に受け止められる自信があったから。




『先輩のこと、大好きだったのに……っ』



だけどやっぱ、あいつの言葉は、俺の心をひどく疼かせた。



……本心が、涙となって全部溢れてくる。




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