【完】こいつ、俺のだから。
「ちょっと待ってください!皆さん、ケンカは……」
「とにかく!こいつのそういう格好を見ていいのは俺だけだ!!」
前野さんの言葉を遮り、佐野は真っ赤な顔でそう叫んだ。
その場にいたみんなが、一瞬で固まる。
誰よりびっくりしたのは、あたしだった。
だって佐野が、こんな、クラスのみんながいる所で、堂々とあたしの手を握ってくるなんて思いもしなかったから。
「……コイツと買い出し行ってくる」
佐野はみんなにそう告げると、振り返ることのないまま、強引にあたしを教室から連れ出した。
「佐野」
「…………」
「佐野〜」
いくら呼びかけてやっても、佐野はあたしの手を握ったまま、黙って歩き続けている。
買い出しって言ってたけど、あたしは何も聞いてないから、どこへ向かうつもりなのかもわからない。
「おーい、サトウのご飯」
「あぁ!?」
「!!」
名前を呼ぶこと数回。いや、正確にはサトウのご飯と呼んでみただけなんだけど。
ようやく佐野は立ち止まって、あたしの方へ怒りの表情をあらわにして振り返った。