【完】こいつ、俺のだから。
突然強く、抱きしめられてビックリする。
背中に回された手が、少しだけ震えてるのがわかった。
「お前と一緒にいると、安心するけどたまにすごく不安になる。
さっきみたいに急にいなくなられたら、
誘拐されてたらどうしようとか、
このまま帰ってこなかったらどうしようとか、
俺のこと嫌っちまったのかなとか、……そんなことばっか考えちまう」
「……ちょ、佐野さん。そんな冗談やめてよ」
「冗談じゃねぇよ。
……どうせお前は信じないだろうけど」
だってそんな。
そんな話、信じろって方が難しい。
「いいよ別に信じなくたって。俺の不安なんてお前はわからなくていい。
その代わり、行きたいとこがあるなら俺に言って。俺が連れてってやるから。
頼むから、勝手にいなくなんな……」
弱々しい声とは対照的に、しっかりと離さないというような強い手。
決して自由の身とは言えないのに、なぜかそれが心地よくて。
「佐野……」
「離れても、そばにいても不安になるから、せめてそばにいろって言ってるんだ」
〝独占欲〟
その言葉が、あたしの頭の中を占めた。