【完】こいつ、俺のだから。
ホント、なんだってんだ全く……。
いいよいいよ。いいですよ〜だ。
「わかった。保健室行ってくる」
と、つぶやきながら手に持ってた包丁を置きひとつため息をつく。
あたしのフルーツカットの役割もここで終了だ。
「待て。俺も行く」
ふいに、誰かに腕を掴まれた。
突然の出来事に驚きつつも、顔を上げる。
するとそこには、さっきまで前野さんを支えてた佐野があたしを引き止めていた。
見た瞬間、ドキッと胸が高鳴る。
あたしのことを見てくれていたのか、ケガしたことに気づいてくれたみたい。
前野さんを離して、すぐにあたしのところへ来てくれたことが嬉しかった。
「ちょっと待ってください佐野くん。今ここで佐野くんに抜けられると困ります。
ただでさえ執事とメイドの人数は少ないのに」
たくさんのメニューをおぼんに乗せ、メイド姿の前野さんは佐野にそう言った。
佐野はピクッとそれに反応しつつも、あたしの腕を離さない。
でも確かに、前野さんの言う通りだよね。