【完】こいつ、俺のだから。
あたしを優先してくれたことに、なに嬉しいとか思っちゃったんだろ。
それじゃあ文化祭が成り立たないじゃん。
「佐野。あたし別に大丈夫だから」
「…………」
だけど頑なに、佐野はあたしの腕を離そうとしない。
ドキドキと、心臓が騒がしい。
佐野の目は真っ直ぐにあたしを見ている。
どこか心細げに揺れていて、あたしは手を振り払うこともできない。
「佐野くん、お客さん来てます」
前野さんの、急かす言葉。
「……」
ゆっくりと佐野の手が離れていく。
そしてそのまま目を伏せた佐野は、
「ごめん……」
小さな声でそうつぶやいて、あたしに背を向けて女の子のお客さんの方へ行ってしまった。