【完】こいつ、俺のだから。




あたしを優先してくれたことに、なに嬉しいとか思っちゃったんだろ。



それじゃあ文化祭が成り立たないじゃん。




「佐野。あたし別に大丈夫だから」



「…………」




だけど頑なに、佐野はあたしの腕を離そうとしない。



ドキドキと、心臓が騒がしい。




佐野の目は真っ直ぐにあたしを見ている。



どこか心細げに揺れていて、あたしは手を振り払うこともできない。




「佐野くん、お客さん来てます」



前野さんの、急かす言葉。



「……」




ゆっくりと佐野の手が離れていく。





そしてそのまま目を伏せた佐野は、



「ごめん……」



小さな声でそうつぶやいて、あたしに背を向けて女の子のお客さんの方へ行ってしまった。



< 309 / 418 >

この作品をシェア

pagetop