【完】こいつ、俺のだから。




「……つーかさ、」



楢崎がポツリとつぶやく。



「俺には佐野が、最初から中原のこと好きじゃなかったとはとうてい思えないんだけど」



「え?」



「だってあいつ、中原を笑わせてやりたいってずっと言ってたじゃんか。
だから、別れるって言ったのも何か理由がある気がする」



「楢崎……」



「……てか、お前の気持ちはどうなの?」



「?」



楢崎は自分の胸をポンポンっと拳でたたくと、そのままあたしの心臓を指差した。



「お前はこのままでいいの?」



「……っ、」




このままで、いいワケない。



できるなら佐野ともう一度話したい 。



けど、



「もうあたしと、目も合わせてくれなかった……」



怖いんだ。


また冷たく突き放されるのが。


あたしのこと好きじゃない、嫌いなんだって思うと。



「……すごく怖い……」



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