【完】こいつ、俺のだから。
「仁菜……!」
あたしを追って、光も楢崎も人の間を割って来てくれたみたいだ。
だけど周りがザワザワしていて、佐野はあたしの存在に気づいてない。
いい加減にしろ、佐野悠月。
そろそろあたしを見やがれ……!
「光。さっきのハリセンある?」
「え?……あ、うん、これのこと……?」
光がおそるおそるカバンから取り出したハリセンを、あたしは勢い良く奪い取った。
ギュッと握りしめ、心を落ち着けてヤツを見つめる。
先輩も冷静な顔で、まっすぐに佐野を見つめていた。