【完】こいつ、俺のだから。
「あたしが好きなのはお前だ、バカ野郎!」
数秒の間の後、
「………………へっ?」
佐野の腑抜けた声が、ポツリと漏れた。
「……に、仁菜……」
近くにいた先輩もあたしのこの大胆発言にビックリしてる。
あぁ〜もう恥ずかしすぎる!顔が超熱い!
でも今更引き返せない。ここまできたらやってやる!
半ば強引に羞恥心を取っ払って、あたしは先輩の方に顔を向ける。
「先輩!こいつがバカなことしてすいませんでした!あとでガツンと叱っておきます!
だから、許してやってください……!」
「いでっ!」
ペコッと勢いのまま頭をさげた。
もちろん、片手で佐野の頭も無理やり下げてやったが。
「……や、別になにもされてないから、全然いいんだけど……」
そう言われ、顔をあげて見ると、確かに先輩の頬には傷のようなものはひとつもない。
佐野は掴みかかっただけで、殴ってはなかったようだ。
……よかった。
ほっと安堵の息をこぼす。