【完】こいつ、俺のだから。




驚きのあまり声を出せないでいると、佐野はあたしの肩に手を置き、強引に目を合わせてきた。



「やっとこっち見た」



真っ正面から射るような目線に耐えられなくて、思わず目を逸らしたくなる。




「逸らすな」



「……っ」



「逃げるのはズルいって言ったの、お前だよな?」



もう、完璧に逃げ道は塞がれた。



肩に触れる手。からむ吐息。



ドキドキしすぎて、まともに佐野の顔を見ることができない。



絶対に今、あたしの顔真っ赤だ。




「なぁ、さっきの何?お前、俺のこと好きなの?」



「……」



悔しすぎて下唇を噛む。


これじゃあ肯定してるようなもんだ。




「仮にそうだとして、なんで一昨日、戸田直人にキスされてたんだよ?」



「は?」



「……でこに、キスされてただろうが」



拗ね口調の佐野の言葉に、あたしは一昨日の出来事を思い返した。



< 372 / 418 >

この作品をシェア

pagetop