【完】こいつ、俺のだから。
驚きのあまり声を出せないでいると、佐野はあたしの肩に手を置き、強引に目を合わせてきた。
「やっとこっち見た」
真っ正面から射るような目線に耐えられなくて、思わず目を逸らしたくなる。
「逸らすな」
「……っ」
「逃げるのはズルいって言ったの、お前だよな?」
もう、完璧に逃げ道は塞がれた。
肩に触れる手。からむ吐息。
ドキドキしすぎて、まともに佐野の顔を見ることができない。
絶対に今、あたしの顔真っ赤だ。
「なぁ、さっきの何?お前、俺のこと好きなの?」
「……」
悔しすぎて下唇を噛む。
これじゃあ肯定してるようなもんだ。
「仮にそうだとして、なんで一昨日、戸田直人にキスされてたんだよ?」
「は?」
「……でこに、キスされてただろうが」
拗ね口調の佐野の言葉に、あたしは一昨日の出来事を思い返した。