【完】こいつ、俺のだから。
─────……。
「お、おいブス……!どこまで行くつもりだよ!」
「……」
「ちょ、待てって!」
「…………」
いくら佐野が話しかけてきても、あたしは相変わらず暗黙を貫き通しながら歩き続けていた。
あたしは怒ってるんだ!あんな大衆の前で堂々と恥をかかせたあんたのことを!
ホント、どうしろってんだ全く……!
「おい、仁菜!」
「!!」
佐野が突然あたしの名前を口にし、ドキリとした。
かつてこいつがあたしのことを、下の名前で呼んだことがあっただろうか?
いや、ない。これが初めてだ。