【完】こいつ、俺のだから。



佐野のクセに、あたしを惑わすな。



……バカ野郎。




「佐野、あたしのことずっと見ててくれたの?」



いまだ嬉しそうに微笑んでた佐野が、急にパッと、顔をキョトンとさせた。



そして墓穴をほったかのように、目を見開いていく。



「ちっ……ちちち、ちげーよ!俺はお前のことなんて見てねぇ!自惚れんな、ブス!」



「…………」



「べ、別に、最近お前がムスッとしてるとか、笑ってねぇとか、そんなこと思ってなかったし!」



……そうか、思ってたのか。



わかりやすいなぁ、佐野は。



うん、でも確かに。



最近あんまり笑ってなかったかも。






目を閉じて思い出す。



理由があった。



最近、笑えないようになったのは。



失恋したから。


ただそれだけだ。



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