【完】こいつ、俺のだから。
あれはそうだな……ちょうど夏休み前だっけ。
付き合ってた先輩に、裏切られていたことを知った。
そのまま夏休みを持ち越して、2学期が始まってすぐ……勇気を出して〝あのこと〟を聞いたのに、
……あたしは先輩に振られた。
中学の頃から好きだった人。
その人はあたしのひとつ上の先輩で、名前は戸田 直人(とだ なおと)。
あるとき廊下ですれ違ったガラの悪い人達に、運悪くぶつかってしまったあたし。
そんな人達に追い詰められてるところを、戸田先輩は助けてくれた。
そして優しい笑顔で、「大丈夫?」そう聞いてあたしの手を取ってくれた。
一目惚れだった。
ベタなシチュエーションだと、笑う人もいるかもしれない。
だけどあの瞬間から、戸田先輩はあたしのヒーローだった。