【完】こいつ、俺のだから。
すると中から、中原のすすり泣く音が聞こえてきた。
……え?
びっくりして顔をあげてしまう。
嘘だろ……泣いてんのか?お前。
だっていっつも、あいつと話してるとき笑ってたじゃねぇか。
あいつの話をするだけで、頬緩ませて、幸せそうだったじゃないか。
なのに……。
……なんで、泣いてんだよ?
「……っ」
抱きしめてやりたい。
俺がこのまま教室に入って、「あいつのことなんて忘れろ」って、それだけ言って、涙を拭いてやりてぇ。
けど、今の俺じゃダメだ。
俺は、中原を怒らせることしかできない。
ここに入っても、強がりなあいつの涙を止めてしまうだけだ。
そんなことさせない。
泣きたいときは泣けばいい。
涙を止めたら、その分辛いのが自分の中にたまるだけだろ……?