【続】三十路で初恋、仕切り直します。
心身共に余裕のなさそうな法資に煽られて、熱に浮かされたように訊いていた。
「法資、本当にわたしのこと、好きなんだ……」
「……だな」
「悪いけど、わたしのどこがいいの……?」
とりたてて美人でもないし、性格も個性や特徴に欠けてて、ひとに誇れる特技もない。自分に自信がないからこそ、一度でいいからちゃんと法資の口から訊いてみたいことだった。好きになってくれた根拠の部分を聞いてこんな自分でもいいのだと安心したかった。けれど法資は即座に「そんなん知るかよ」と突っぱねてくる。
「そんな冷たく拒絶しなくたっていいでしょ」
「だったらおまえは自分のどこがよかったと思うんだよ?」
質問で返されて、しばらく考えてみる。
「………からだの相性が、悪くなかったところとか……?」
恐る恐る訊いてみると「はあ?」と少しだけ威圧的に返されて萎縮してしまう。
「ほらだって、さっき『抱くまでは』とか言ってたし……」
先ほどの法資の言を『一度で捨てるつもりだったけど、セックスの相性がよかったから本気になった』という意味に解釈すればいいのかと考えてみたけれど、法資はしらっとした顔で溜息を吐く。
「……おまえさ、ほんと俺のことろくでなしにしか思ってないんだな。ってかそんなに自分の体が上等だって自信があるのか。抱けば男が夢中になる体だって」
法資は意地悪に言って、わざと泰菜なコンプレックスにしているちいさな胸に触れてくる。
「ちがっ、そういうこと言ってるわけじゃなくて……」
「すくなくともおまえの体に俺が籠絡されて本気になったって自信はあるんだろ?」
「ちがいます、誰もそんなこと言ってないでしょ!」
そういう意味で言ったわけじゃないのに。それを分かっててわざわざ意地悪く言ってくる法資が憎らしい。けれど法資も泰菜を軽く睨んで鼻先を摘んでくる。
「先に俺が体目当てみたいな言い方したのおまえだろ。……そりゃ悦かったけどな」
そういうことじゃねぇよと法資が吐き捨てる。