【続】三十路で初恋、仕切り直します。




ゴールデンウィークが終わって一ヶ月、梅雨入りの季節を迎えていた。



せっかく2人で過ごせたGWは、とても残念なことに不本意な別れ方で幕を下すことになった。

法資とは一緒に静岡に戻って中部空港から彼を見送る予定だったのに、仕事の都合で急遽彼は都内で披露宴の打ち合わせをした後、一日前倒しで成田空港からシンガポールへと旅立つことになってしまったのだ。


本当は帰国当初から泰菜が知らないところで何度も調整を重ねていたらしく、けれど電話やメールでは対応しきれない案件が出てきて、どうしても休暇を短縮してシンガポールに戻らなくてはならなくなったらしかった。


『悪い。今日の昼、向こうに戻ることになった』


宿泊したホテルで何度も法資と体を重ねた翌日、本当ならばしあわせに満ちた朝を迎えるはずだったのに、目覚めたベッドの中で彼にそう告げられたときはショックで言葉もなかった。


しかも一日早くなってしまった法資との別れを冷静に受け止める前に再び『Louison』へ打ち合わせに行かなくてはならず、半分だけ打ち合わせに同席した法資のことはその場で見送らねばならなくなった。

プランナーやレストランのスタッフの目があったからさびしいのに涙を零すわけにもいかず、唐突に別れるなら最後にちゃんとキスをしておきたかったとか抱き締められておきたかったとか考えながらも、その後ひとりで担当の伊田と残りの打ち合わせを続けるしかなかった。



そのときのことを思い出すと、いまだに涙が滲んできてしまう。それくらいやりきれない別れ方だった。




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