【続】三十路で初恋、仕切り直します。


丁度一週間前の土曜日は、泰菜の職場の上司や同僚、大学時代の恩師友人を招き静岡で披露宴パーティーを行った。


『今日は酒を飲みに来ただけだ』などと憎まれ口を叩いていた田子が、披露宴開始からいくらも経たないうちに泰菜の花嫁姿に感極まって泣き出したり。

夫婦で列席してくれた藤と優衣が『ね、泰菜の旦那さん超イケメンでしょ?話盛ってないでしょ?約束だから挙式までにちゃんとダイエット頑張ろうね』『あれ基準とか無理だから。俺とはジャンル違うから。うちはうちでいこうよ』などと漫才のような掛け合いを始めて周囲から笑いを誘ったり。


パーティーは始終穏やかでたのしい雰囲気だった。

にもかかわらず、現像された写真の中で泰菜が自然な笑顔を見せているものは驚くほど少なかった。





「まあまあアキちゃん、法資さんが来れば泰菜さんの緊張も解けるわよ」
「だといいけど。それにしても法くんたらまだなの?」

晶はしきりに時計を気にする。一方の紀子はここにいる誰よりも法資の到着を待ちわびているのが泰菜だと悟っている所為か、「泰菜さん、ブライダルエステにはちゃんと行けたみたいね」とさりげなく話題を変えてきた。


「あ、それ私も思った。泰菜ちゃん、お肌つやつやふわふわよね。デコルテもすごいきれい」
「うんうん。色も白くて純白のドレスに負けてないっていうか。すごくきれいでうらやましい。……私のときはいろいろと見苦しいものを見せちゃってごめんなさいね」

紀子が言っているのは二年前のことだ。

泰菜の父親と交際三年目にして入籍した紀子は、34歳のときに挙式した。父が再婚と言うこともあり、身内だけを呼ぶとても慎ましやかな式だったけれど、レース遣いが繊細なクラシカルなウェディングドレスに身を包んだ紀子は美しく、父の隣でとても幸せそうに微笑む顔は今でもはっきりと思い出せるくらい輝いて見えた。




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