【続】三十路で初恋、仕切り直します。

「そんな。紀子さん、とても素敵でしたよ。大人っぽいドレスもすごく紀子さんに似合っていたし」
「よして。あの頃、仕事忙しくて結婚式前だったのに寝不足たたって、写真ひどい顔色で写ってるし。それに泰菜さんに秀作さんとの入籍許してもらえただけでもありがたいのに、私の我がままで挙式までさせてもらって……」
「わがまま?何言ってるんですか」

いまだに義理の娘である泰菜に気後れした様子を見せる紀子に、思わず返す言葉が強くなった。

「全然わがままなんかじゃないですよ。結婚したら挙式もしたいって思うのは普通のことでしょう。わたしだって、親の結婚式に出られるなんてなかなか経験出来ないことだからうれしいっていうかたのしいっていうか、いい思い出ですよ?」


堅物で如何にも挙式を渋りそうな父が、当日は照れ臭そうにしつつもとてもしあわせそうな顔をして始終朗らかな笑顔でいたことは、娘の目から見ても微笑ましかった。

母と離婚し、男手ひとつで育てていた娘も進学のために家を出て行き、父は「もう所帯を持つ気はない」と言って長く独り身でいた。そんな父の突然の再婚話に、もし子供の頃だったらもっと複雑な気持ちになっていたかもしれない。

けれど、既に大人になっていた当時は父が心を許し共に支えあえる女性とめぐり合えたことにうれしさとともにほっと安堵したのを覚えている。


「そういえば紀子さん、ありがとうございます。今日母にも列席してもらった方がいいんじゃないかって、父にいろいろ掛け合ってくれていたみたいで……」




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