【続】三十路で初恋、仕切り直します。
こいつがいれば大丈夫だという、なんの根拠もない、けれど他に何もいらなくなるほどの圧倒的な肯定感。
他の誰でも駄目だった。
多少の心地よさや幸福を与えてくれても、今泰菜を抱き締めているときほどのしあわせを与えてくれる女はいなかった。
ずっと『泰菜でない泰菜』を探していたけれど、そんな女はどこにも見つからなかった。やっぱり自分が欲しいのはこの女だけなんだと、認めたくない心のどこかでは、たぶんちゃんと悟っていた。
そのくせ、くだらないことにこだわって、悪あがきのように自分の気持ちを認められなかった。
……身勝手で無様な言い分だと分かっている。
それでもずっと自分とは特別な絆があるのだと思っていた泰菜が、自分ではない男に惚れてあっさりとその身を捧げたこと。それが16歳の自分にはどうしても許せなかったのだ。
「……泰菜が好きだ」
今こんなに簡単に言えることが、どうしてあの頃言うことが出来なかったのだろう。