【続】三十路で初恋、仕切り直します。
泰菜は自己嫌悪に陥っていたけれど、泰菜の塞いだ表情を別の意味に受け取ったらしい法資は苛立ったように眉を顰めた。
「喋ったのが俺だったらおまえぶん殴ってでも喋るのやめさせたんだろうな。……昔からお前俺に容赦ねぇときあっても兄貴にだけは甘い顔してたよな」
自分の言葉に自分で煽られたかのように法資の言葉がだんだん棘棘しくなってくる。
先ほどの顔合わせのときも、相変わらず英達と泰菜が親しく話していると面白くなさそうな顔を隠しもしなかった法資だ。
嫉妬されてることに淡い喜びを感じている自分に気付くたびに、泰菜は自分の器の狭さに落ち込みそうになった。
「……ちっちゃいやつ」
泰菜の口からこぼれた言葉に法資が目を見張る。
「ヤキモチ焼き。強がり。恰好付け、あまのじゃく、」
「おい泰菜、」
「……全部部自分に言ってるの。もう最低」
どうにも出来ない過去のことで、どうしようもなく心が乱れてしまう。
10代の途中で上手くいかなくなってしまった法資との仲を、30歳を過ぎてからやり直したからこそ、今の形がある。そうわかっている。
わかっていても悔しい。今法資が自分の恋人でもうすぐ自分の夫になるのというのに、それでも法資が自分ではなく他人のものだった時間があることが悔しい。
悔しく思っていることを隠せないでいることも、たまらなく恥ずかしくて悔しい。
「泰菜。ちょっとこっち向け」
「……ごめん。今わたしほんと最低なの」
いつもなら強引にでも自分の方に向かせるのが法資なのに、今日は荒っぽいことは何もせずにじっと泰菜を見詰める。そのまましばらく不安定に目を揺らす泰菜を眺めた後、法資は「おまえ、俺のこと好きなんだな」としみじみと呟いた。
「泰菜。いいから顔見せろ」