ラベンダーと星空の約束+α
 


 ◇◇◇


雪解けの春。

柔らかな光と強い風を頬に受け、

色味の乏しい茶色の大地に、芽吹いたばかりの緑を喜ぶ。





紫色に染まる夏。

大地を肌に感じて働く事を喜び、

家族との絆を深め、

青く光るラベンダーの海の中、君と星空に神話の世界を描く。





肩の力の抜ける秋。

燃える様に紅葉する峰々を遠くに望み、

観光シーズンを無事に乗り切った達成感と満足感、

それから実りの季節の妻の美味しい手料理を味わい、腹も心も満たされる。





風雪に閉ざされる冬。

暖炉の炎が揺れる暖かな室内から荘厳な白銀の世界を眺め、

本に囲まれた空間で空想の世界を紙に記し、

緩やかに流れる時の中で君に愛を語る。






幸せな月日が流れていた。




心の水面はいつも凪いで、不安も迷いも感じない。




世界中の幸せを独り占めしているのではないかと、ふと心配になる程の幸福感の中にいた。




紫色に香る北の大地には、俺の望む全てがあった。




ありがとう紫。


最高の幸せをありがとう。




俺の人生の晩年は、ラベンダーの様に鮮やかに色付いて、星空の様に輝いていた。




誰が何と言おうと、俺の人生は間違いなく幸せだった。




ありがとう…愛しい人… 


君との幸せな時間を与えてくれた、この心臓にも…ありがとう…



それから…龍さんと、大樹と、瑞希と、家族と………

自分に関わる全てにお礼を言いたい。




心からありがとう…


そして…さよなら……






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