ラベンダーと星空の約束+α
 

 ◇◇◇


[side 大樹]



夏真っ盛りの夜遅く、紫ん家のリビングに、いつもの様に俺は居た。



カウンターテーブルに置かれたデスクトップのパソコンを開き、紫は撮り溜めた写真を見ていた。



リビングの照明は消してある。

デスクライトの光りだけを弱めにつけ、俺と紫とパソコンの画面だけが、暗闇の中に白く照らし出されていた。




「この写真は、高校二年生の時の流星。

フフッ 髪の色を明るくし過ぎて、金髪みたいだよねー。


この時ね、私の事をまだ“ゆかりちゃん”て呼んでる時で…

この右手に持っている紙切れには“夏の星空観測ツアー御招待券”て書いてあって…

ねぇ、大樹聞いてる?」




「聞いてる」




「あれ?本当だ。
今日は珍しく、ちゃんと聞いてくれてる」




「珍しくって何だよ。

いつもてめぇが呼び出す度に、話し相手になってやってんだろ」




「来ることは来るけど、大樹はいつも途中で寝ちゃうじゃない」




「眠気には勝てねぇ。

ふあ〜あ〜あ〜…

今も眠ぃけど、今日は頑張って付き合ってやる。

で?こっちの写真はいつのだ?」




「あっそれはね、亀さんとたく丸さんの卒寮記念に写したものだよ。

何か記念になる品をあげたいねって相談して、流星と瑞希君と三人で柏寮の写真を…」





紫は懐かしそうな目をして画面に広がる柏寮と、寮の仲間と流星の写真を見ていた。




10年以上前の写真。

その中で笑う紫も流星も、写真の中のこいつらは今も色褪せたりしねぇ。




網戸から涼しい風が入り、紫の髪が揺れていた。



ライトアップ中のラベンダーを見に来た観光客の話し声と、

煩ぇ程の虫の音が、風に乗って家ん中まで入り込んでくる。




欠伸(アクビ)をしながら時計を見ると夜の11時半だ。

ここん家の家族はみんな寝てる。




紫も日中の激務に疲れている筈だが、今夜は眠れねぇよな…




後30分で日付が変わると、7月19日がやってくる。

あれから三年…

この日は特別だからしょうがねぇ。



だから欠伸ばっか出やがるけど、今晩は俺も寝ないで起きていてやるよ。



日付が変わったら、俺から紫に渡さなきゃならねぇ物もあるしな…




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