ラベンダーと星空の約束+α
紫は『柏寮』とタイトルの付いた写真ファイルを見終わると、
長い溜息を吐き出し、グラスの麦茶を一口飲んだ。
麦茶はぬるくなってんだろうけど、30分前は冷え冷えだったから、グラスの周りには沢山の水滴が付いていた。
その水滴で濡れてしまった右手を、こいつは当たり前の様に俺のTシャツで拭く。
「てめぇ…
俺の存在はタオルか?」
「タオルにもなり、いつでも電話一本で駆け付ける便利屋」
「あーそーかよ。
ったく…てめぇは可愛くねぇな」
俺の可愛くないの言葉を完全にスルーして、次に紫は『結婚式』のファイルを開く。
我妻のオッサンが写した写真が、PC画面を流れて行った。
青空の下のラベンダー畑でウエディングドレスを身に纏い、流星の隣で笑う紫はマジで嬉しそうでいい顔してる。
俺が見たくねぇ誓いのキスの写真だけは目を逸らしたけど、他の写真はちゃんと見てやった。
こん時のこいつらは、現実味が無ぇくらいキラキラして見えんな…
それを見終わるのに30分以上かかった。
撮り過ぎだろってツッコミたくなる位に大量だ。
やっと結婚式の写真が終わったかと思っても、まだまだ写真ファイルは沢山ありやがる。
次に新婚旅行の写真を見始めた紫。
結婚式の翌年の春先、遅めの新婚旅行に二人が出掛けた先はロシア。
目的はもちろん、紫を我妻のオッサンとこのじーさんとばーさんに紹介する為で、
一週間の滞在で紫が写してきた写真の量も半端ねぇ。
やべぇ眠ぃ…目がシパシパしてきた。
けど今日は寝てらんねぇんだ。
写真見んのに付き合って、日付が変わったらアレを出さないといけねぇから…
ああ、もう日付変わってんのか。
しっかし写真の量が半端ねぇな。
立ち上がり、眠気覚ましに冷蔵庫に飲み物を取りに行く。