ラベンダーと星空の約束+α
 


紫は相変わらず人に頼るのが下手くそで、妊娠してからは特に

「もっと体を労って」
と流星に注意されてた。



重たいごみ箱を「よいしょ」と引きずりながら運び出した紫。

流星はそれを書斎の窓から見ていた。



そんで体調が良くねぇのに店のエプロンを着て、外へ出たんだ。



その仕事を誰か他の奴にやらせようとしてたんだろうな。



それと、朝から働き通しの紫を、休ませたかったのかも知れねぇ。



流星がレジに入れば、一人休憩に入れられる。

そう考え、あいつは無理して店に出ようとしたんだろう。



その気持ちは分かる。

俺があいつの立場だったとしても、同じ事をしたんじゃねぇかな。




あいつが自宅を出て店に向かうと、紫はゴミ箱に手を掛けたまま、

自販機から1メートル離れた場所で、一人の女性客と話し込んでいた。



後で聞いたら、安産の極意を教わってたとか言ってたかな…

まぁ、話しの内容なんてどうでもいいか。



強い日差しの中、眩しそうな顔して額に手をかざし、話しに夢中になってる紫。

そんな紫に、流星はゆっくり近付いて行った。



それに気付き紫は振り向く。

「大丈夫なの?」と言いかけた。



そう…言ったんじゃなく、言いかけただけ。



「大丈夫なの?」と言う短けぇ言葉は、

驚きに消され、最後まで言えなかった…




その時、目の前に広がるアスファルトの駐車場に、観光バス一台と20台程の乗用車が止まっていた。



駐車スペースの大体三分の二が埋まっている状態だ。



日中この駐車場は車の出入りが激しいが、広いし見通しはいいっつーか、

観光道路から駐車場まで遮る物なんか何も無ぇから安全だ。

それまで、事故なんか起こった事は無ぇ。




自販機横で、紫が安産の極意を夢中で聞いている時、

白い普通乗用車一台が、観光道路から駐車場に入ってきた。



それはいつもと変わりねぇ、当たり前の光景だ。



客の多くは車で来て、ラベンダーの写真を撮り、土産を買って帰って行く。



その白い車に乗っていた奴も、そんな当たり前の観光をしに来ただけだった。




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