ラベンダーと星空の約束+α
白い車はどこに止めようかと迷っていた。
そん時の駐車場は三分の一は空いてたから、どこだって止められるのによ、
何か知んねぇが迷って一周してから、自販機の側の駐車スペースにやっと決めたみたいだった。
そこにバックで入ろうとしている車。
初心者マークは付いてねぇのに、下手くそな運転で、入れたり出したりもたついてやがる。
その車とは別に、動き出そうとしている車があった。
それは大型の観光バス。
大勢の観光客を乗せ、次の観光地に向かう為、まさに発車しようとしている所だった。
バスの運転手は発車を知らせる為、もたつく白い車に向け「パァン」と短いクラクションを鳴らす。
白い車の運転手はその音で、自分が邪魔なんだと焦ったんだろうな…
自販機側の駐車スペースでまだもたもたしていたが、
クラクションにビビって、一度そのスペースから出ようとしたんだ。
白い車の運転手は焦りの中でアクセルを踏んだ。
しかし…ギアの切替を忘れ…ギアはバックに入ったまま……
当然車は前に進まず、勢い良く後ろの自販機目掛けて突っ込んで行った。
自販機のすぐ横には紫がいた。
外に出て来た流星に
「大丈夫なの?」と言いかけている最中だった…
突っ込んで行く車に気付き、紫の隣にいた女性客はすぐに逃げたけど、紫は走れねぇ。
かつての俺のせいで麻痺を残す右足は、走れる程に機能を回復してはいなかった。
加えて身重の紫が出来た事と言えば、
咄嗟に車に背を向け、腹の子を庇うことくらいだ。
流星はそん時、紫から5メートル程離れた位置を歩いていた。
紫も走れねぇが、流星も走れねぇ体だ。
少しでも走ったりすれば、心臓がたちまち悲鳴を上げ、ぶっ壊れる事は重々承知していた。
けど…あいつは走ったよ。
5メートルの短い距離を、何の躊躇いもねぇ、すげぇ勢いで駆けて…
白い車が紫の背中に突っ込む寸前に、紫を力の限り、衝突のエリア外へ弾き飛ばした。