ラベンダーと星空の約束+α
バスタオル忘れたのは、百歩譲って仕方ないとしてもさぁ、
ドアを開けて、言わないでよ…
大事な所はフェイスタオルで隠していたけど、
そこからはみ出している胸の横の小さな膨らみとか、太ももとか、
赤く上気した可愛いい頬っぺとか、雫が垂れる濡れた髪の毛とか…
そんなの見せられたら…
「僕の下半身事情を考えてよ!」
と危うく叫んでしまう所だったよ。
僕だってやりたい盛りの男の子なのに、彼女はそれを全く理解してくれない。
しかも、この話しにはまだ続きがあるんだ。
必死の思いで、可哀相な息子を諌(イサ)めながら彼女の部屋に入り、バスタオルを取り出す為にクローゼットを開けた。
そしたらさ…
籠に綺麗に並べられたカラフルなパンツやブラが、見える位置に置いてあるし…
あの時は、天然通り越して、悪意を感じたよね。
その他にも、リビングのソファーでうたた寝している時の、半開きの桜色の唇とか…
「今日も暑いね。
瑞希君悪いけど、髪の毛結んでくれる?
ポニーテールにして?」
そう言われて、少し汗ばんだ白いうなじを見せられたり…
大ちゃんのおこぼれじゃなく、僕だけの為に料理をするエプロン姿とか…
うっかり新婚気分で、料理中に後ろから抱きしめたら、
「瑞希君、危ないから止めて!
料理中はふざけない。分かった?
分かったならあっち行って。邪魔」
そんな辛辣(シンラツ)な言葉を浴びせられてさ……
もう大変。僕だけ大変。
だから大樹が富良野に帰ってからは、たく丸君と亀さんに『Help!』と、しょっちゅうメールを送っていた。
鈍感な紫ちゃんは、二人が彼女を心配して、良く遊びに来るのだろうと思っていた。
それもあるけど、二人に来て貰う最大の理由は、僕の男の子的な事情だよ!
いっその事押し倒して…一度くらい…
なんて思う夜もあった。
だけどそんな時に浮かぶのは、大ちゃんの顔と、大ちゃんが置き手紙に残した最後の一文。
『瑞希を信じているから』
あの言葉は、確実に僕への牽制(ケンセイ)だよね。
紫ちゃんが卒業して大樹に渡すまで、手を出すなって事でしょ?
結局僕は、信じられてないんじゃん。
ひっどいよねー。