ラベンダーと星空の約束+α
「う…そんな事言われたら、文句も言えなくなるじゃん…
大ちゃんは、いつもズルイよ…」
上手く丸め込まれたのは分かっているけど、悪い気はしなかった。
親友だと言ってくれて、紫ちゃんと同居時代の苦労を、少しは察しているのだと分かって、
メイクが崩れる前に、無事に涙は止まった。
少し昔話をさせて貰うよ。
柏寮を出てから、大ちゃんが用意した新しいマンションで生活していた時の話し。
紫ちゃんの卒業までの、一年と少しの二人暮らしは、色んな意味で大変だった。
大ちゃんがあんな消え方したせいで一時はおかしくなってしまった紫ちゃんだけど、
それは大樹のお陰で、すぐに元の彼女に戻ったから問題ない。
元気がないとか、落ち込んでいるから励まさないといけないとか、
そう言う意味での大変さも、余り感じなかった。
彼女は元々しっかりしてるし、メンタルは強い方だからね。
僕が大変だと言ったのは、女装していても、僕の心は男の子であると言う意味でだよ。
大ちゃんがいた時には、彼女を恋愛対象に入れないように頑張ってきたけど、
フリーになった紫ちゃんと二人暮らしって…ある意味拷問だよね。
恋愛に関して、彼女はどこか抜けているからさ、
僕が複雑な気持ちを抱えている事なんて、これっぽっちも分かっていない。
それどころか、同性と思われているとしか思えない言動が度々あって……
思わず、
「僕だって男なんだけど、分かってる?」
と聞いた事もあったよ。
それに対する、彼女の返事はこう。
「何言ってるの?
瑞希君は男の子に決まってるじゃない。
女装していても、パンツは男物でしょ?
あ、さっき洗濯した時に、瑞希君のパンツも私のと一緒に洗っておいたよ」
うん、明らかに男だと思ってないよね。
僕のピュアな男心が、鈍感過ぎる彼女の言動に翻弄(ホンロウ)されたのは、これだけじゃないよ。
聞きたい?
痛手だけど…話してあげる。
例えば、彼女の入浴中の話し。
僕が部屋に居ると
「瑞希くーん!」
と浴室から大声で呼ばれ、
行って見ると、ドアを10センチ開けて、顔と半身を覗かせた紫ちゃんがいた。
そして…
「バスタオル忘れちゃった。
私の部屋のクローゼットから持って来てくれる?」
なんて言うんだよ。