ラベンダーと星空の約束+α
今すぐ取って来いと言うとは、恐らく流星も予想していなかっただろう。
「後で探してみて」と言ってたし、
一次停止寸前の流星の顔は、まだ可笑しさの中で笑っていやがったけど、
本は机の上に置き、足を組み替え、次の話題を始める準備をしているみてぇだった。
予想外な紫の台詞に、仕方なく立ち上がり、リビングを出ようとした。
そんな俺の背中に向け、こいつは言う。
「大樹、3分で戻って来てよ!」
「アホか、ウルトラマンじゃねぇから無理」
俺達の家は隣と言っても、自転車5分の距離が開いている。
今日は車で来てねぇし、急ぐならチャリだ。
そうすると本を探す時間を無視しても、単純計算で往復10分必要だ。
3分は無理だが、紫の為に急いでやった。
星明かりの中、紫ん家のチャリをぶっ飛ばし、家に帰る。
チャリを乗り捨て階段を駆け上がり、十数年間手付かずで机に山積みだった、教科書やノートやプリントを、バサバサ床に投げ捨てていく。
物音に起きてきたお袋が
「うるっさい!こんな夜更けなにやってんのさ、このバカ息子が!」
と怒鳴り込んできたが、
それを「あー悪りぃ…」と適当に聞き流す。
机の上の厚みが四分の一程に減った時…
あった…ありやがった。
ラベンダー畑と星空の写真がプリントされた表紙に、
確かに『紫に贈る ラベンダーと星空の約束』と書いてある。
DVDの中で流星が持っていた本に間違いねぇ。
呆れ顔で寝室に戻って行くお袋の横をすり抜け、階段を駆け降りた。
再びチャリを飛ばし、紫ん家に戻る。
リビングに入り壁時計を見ると、出掛けた時から8分しか経っていなかった。
すげぇな俺…新記録の速さだな。
画面は変わらず一次停止のままで、紫もソファーの同じ位置に座っていた。
息がまだ乱れている中で、探してきた本を紫に手渡す。
「あったぞ。
小6の国語と、中1の数学の教科書の間にありやがった。
ったく…夜中に何させんだよ…ハァ…疲れた…」
どっかとソファーに腰を下ろすと、紫は珍しく「ありがとう」と礼を言った。