続・雨の日は、先生と

キケンな一日

「唯?」



その声に、ふと目を開ける。

目の前には、心配そうに私の顔を覗き込む、先生。



「え、」



いつの間にか眠ってしまったらしい。

それも、ソファーの上でシロを抱いたまま。

隣には、ぴったりと身を寄せるようにたまも眠っている。



「インターフォンを押しても出ないから。」



そう言って、鍵を揺らして見せる先生。

いたずらっぽい笑みに、きゅんとしてしまう私がいて。



「ごめんなさい、夕飯も作らないで……。」


「いいんだよ。唯は私の家政婦じゃない。」



私の隣に腰掛けた先生は、私の腕からひょい、とシロを抱き上げた。

そして、静かに床に下す。



「唯は何を迷っているの。」



先生は、真っ直ぐな瞳で私を見つめる。


そうだよね。

先生の覚悟に比べたら、私なんてちっとも心が固まってない。

脅されて揺らぐくらいに、弱い心で。



「責めているんじゃないよ。分かってくれるね。」



先生に肩を引き寄せられて、私は簡単に先生の腕の中に包まれる。

あったかくて、先生の香りがして。

これ以上に、居心地のいい場所を私は知らない―――

それなのに、完全に先生に身を任せられないのは、今朝のことが引っかかっているから。


幸せなのに、切なくて。

私は、先生に悟られないように、ほんの少し泣いた。
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