ヒット・パレード



陽子から受け取った森脇の連絡先に電話して、本田は明日のレスポールでの面会を申し込んだ。


幸い、森脇はその本田の申し出に快く応じてくれた。電話での話では、森脇は既に工事現場の仕事を辞め、本格的に今回のライブに動き始めるつもりなのだという。


「それでは、明日の夜レスポールにてお待ちしております」


丁寧に電話の向こうの森脇に挨拶をし、静かに受話器を置いた本田は、ふつふつと己の内に沸き上がる興奮をその身に感じていた。


テレビ局に入社し、ADの下積み時代から夢見ていた。どこの局も手掛けないような、大きなライブ特番を自らの手でプロデュースする事。


それが、今まさに本田の手の届くところまで来ている。


そして、その24時間ライブ成功の大きな鍵を握っているのが、メインゲストに位置付けられているトリケラトプスのステージである。


28年間のブランク、そしてリードギターである前島 晃の不在、そんな不安要素は確かにあるが、きっとあの森脇 勇司ならやってくれるに違いない。本田はそう信じていた。


ほんの一昨日まで、その足取りですら掴めなかった森脇。そして、そのせいでライブの企画自体がぶち壊しになろうとしていた。


『二週間でトリケラトプスとの出演交渉が出来なければ、ライブの企画は内容を大幅に変更する』


局長にそこまで追い詰められてからの、まさに奇跡的な逆転だった。


もう、何も怖いものは無い。あとはただ、突き進むだけだと本田は心に誓い、トリケラトプス出演決定の報告をしに局長室へと向かった。



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