ヒット・パレード
燦々と照りつける八月の太陽を睨むように目を細め、額の汗を手の甲で拭う。
「あっついな……まったく」
思わずそう呟く森脇の右手には、水と花の入ったバケツ。そして左手には、線香の束があった。
森脇はこの日、トリケラトプスの復活を前島の墓前で報告する為に、彼が眠るこの墓地へと一人で訪れていた。
前島の墓に対面すると、森脇は、持っていた花を供え線香に火をつけた。そして、墓石を水できれいに洗い、来る途中で買ったジャックダニエルと彼が愛煙していたマルボロを一緒に供える。
何秒かの間、黙祷し墓前に合掌した後で、森脇は穏やかに語りかけた。
「また、ライブ演る事になったよ。
今夜、てっぺん回ったら。場所はお前が演りたがってたあの武道館だ。
お前が居ないってのは、ちっとばかし寂しいけどさ、よかったら、あの世から観ていてくれよな」
それだけ告げて、墓前を去ろうとした時、ふと背後から風に乗って、当時前島がよく言っていた口癖が森脇には聴こえたような気がした。
その台詞に答えるように、森脇はもう一度墓前に振り返って言った。
「ああ、分かったよ。《一発派手にぶちかましてやる》さ」
24時間ライブ本番までは、残りあと12時間と迫っていた。
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