ヒット・パレード



「あれっ?お神輿止まっちゃいましたよ」


「おかしいな……まだ曲の途中だぞ?」


予定外の出来事に、本田と陽子が怪訝そうに神輿を見つめる。


神輿の上に乗っていた大俵も当然その異変に気付いたが、神輿の上、しかも生放送での歌の途中ではどうする事も出来ない。


自慢の神輿の不具合に多少の不満は抱きながらも、歌う事にはさしたる不都合も無かった為、大俵はそのままステージを続けていた。



ところが、次の瞬間。



ガッタン!


「うわっ!」


突然、大俵の乗る神輿の上下運動が今までのようなゆっくりとした動きから、まるで耐震性のデモンストレーションをするモデルルームのような激しい揺れに変わった。


ガタン!ガタン!ガタッ!ガタッ!ガタン!


「なっ!なんだなんだなんだっ!」


その激しい上下運動に思わず持っていたマイクを手放し、跨がっていた龍の首へとしがみつく。


「どうなってるんだ!誰か助けてくれっ!」


突然、暴走を始めた大俵の神輿。歌はまだ途中だったが、それどころでは無い。先程までのステージの満面の笑顔は何処へやら、必死の形相で龍の首に掴まって誰かの助けを乞う。


会場に鳴り響く《日本全国豊作音頭》の長閑なメロディとは、なんとも対照的な絵面である。



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