ヒット・パレード
ゴールデンタイムの生放送中に起こった、予想だにしなかったこの突然のアクシデントに、番組責任者であるプロデューサーの本田、そしてディレクターの陽子は………
二人で笑っていた。
もし、これが他のアーティストの身に起きたアクシデントであったなら、きっと心境は違っていただろう。
しかし、相手があの大俵では気分的にもあまり本気で心配する気にはなれない。むしろ心の中では、ざまあみろと思っているに違いない。
番組的にも、大俵のクソつまらない歌を聴くよりも、神輿の上でリアクション芸人のようにオロオロと取り乱す大俵の姿を観ていた方がよっぽど面白い。もしかしたら視聴率も上がるかもしれない。
「ハハハ、なんだよアレ♪
一千万もかけたくせにあっさりとぶっ壊れてやんの、ダセエ神輿」
暴走する神輿を指差し、腹を抱えて笑い転げる本田。
すると、そんな本田に対して陽子が一言。
「本田さんが蹴ったからじゃないですか?」
「え・・・」
「朝、大俵さんのステージがゴルフでドタキャンになった時、本田さんがキレてお神輿蹴っ飛ばしたの、私見てましたよ」
「あーーそう言えば」
言われてみればそんな事があったな………と、記憶を辿る本田。かと言って反省する訳でも無いのだが。
そんな本田に、スタッフからインカムで連絡が入る。
『本田さん、大俵さんのステージどうしましょう?指示お願いします!』
スタッフの問い掛けに、腕組みをしながら数秒ほど思案すると、本田はインカムのマイクに向かって答えた。
「面白そうだから、暫くこのまま続行でいいよ」
どうやら、大俵を助けてやろうという選択肢は無いらしい。
その間にも、大俵の乗った神輿は暴走を続けていた。こうなるともはや、神輿と言うよりロデオマシーンと呼ぶ方が相応しいかもしれない。
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