ヒット・パレード



その意味は、まもなく解った。


「あ………本田さん、アレ……」



「あ・・・・」


突如として静まり返る観客席。そして、あんぐりと口を開けて神輿の上を指差す陽子。


そして、ステージの床に目を移せば、つい今しがたまで大俵の頭部を形成していた七三の黒い頭髪の塊が無惨に転がっていた。















「あの人………ヅラだったんだ………」


陽子と本田が「ハゲてしまえ!」と罵るまでも無く、もともと大俵はハゲていたのだった。


大俵のヅラが神輿の振動で飛んだ決定的瞬間は、テレビNETの敏腕カメラマンによって全国のお茶の間へと配信。恐らく、あと数分後にはYou tube で全世界へと配信される事となるだろう。


肝心の大俵 平八郎本人は、神輿にしがみつくのに必死で自分のヅラが頭から無くなっている事に今だ気付いていなかった。


「ヒィィィィ~~~ッ!助けてくれぇぇぇえええええっ!」


ハゲ散らかした頭で神輿にしがみつきながら大声で喚き散らす大俵の滑稽なリアクションに、観客は大爆笑。


「もうダメだああああ!終わったああああ!」


マネージャーの木村は、絶望にかられたその顔を両手で覆い、絶叫しながら膝から崩れ堕ちた。


「ちょっとやり過ぎましたかね?」


肩をすくめて陽子が本田に尋ねる。


「ま、生放送にハプニングは付き物だ」


腕組みをしながらそう答えた本田は、インカムで神輿の回収を命じるのだった。



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