ヒット・パレード



陽子の言う通り、武道館一帯の停電はそれから一分もしないうちに無事解除された。


「ふう、なんとかライブは出来そうだな。あのまま停電が続いたら、俺達の代わりに稲川淳二のライブが始まるところだったぜ」


停電が復旧した安堵感からか、武藤がそんな冗談を言って笑った。


しかし、そんな武藤とは対照的に、森脇はまるで戦場にでも行くかのような真剣な顔をしている。


「おい、なんて顔してんだよ。これから楽しいライブの始まりだぜ」


肩に力の入った森脇への、武藤の気遣いだった。その一言で気を取り直した森脇が「そうだな」と呟いて微笑んだ。


とにかくやれるだけやってみよう。


そう覚悟を決めた森脇は、眩い光を放つ、これから自分達が立つであろうステージの方へと目を向ける。







ステージの異変に気付いたのは、その時だった。



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