ヒット・パレード



Zipのメンバーは森脇を取り囲み、握手をしてくれだの記念写真を撮ってくれだのと散々騒いでいたが、やがて我慢の限界を越えた森脇に店を追い出されるようにして帰っていった。


「クソッ!二度と来んな、アイツら!」


「もう、だめですよ森脇さん。ファンは大事にしないと」


「なにがファンだ!俺はもう、とっくの昔にリタイアしてるっつーーの!」


そう言って、さも不機嫌そうにジャックダニエルをあおる森脇の横顔を見つめながら、陽子は改めて森脇のカリスマ性を再確認していた。


Zipのメンバーの年齢は22~23歳、トリケラトプスが活躍していた80年代には、当然まだ彼等は生まれてもいない。


そんな若い彼等に、解散して28年経った今もなお認知され『神』とまで言わしめるロックバンドなど、国内でトリケラトプスの他に果たしているのだろうか。


本田から渡されたトリケラトプスのCDを初めて聴いたあの夜の衝撃を思い出す。


やっぱり、トリケラトプスにはもう一度ステージに上がってもらいたい。それは、出演交渉が陽子の仕事だからとか24時間ライブの成功の為というより、ただ純粋に彼等のとびきりのライブステージを自分の目で直に観て感じたい。


陽子は、そう思った。



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